- 著者
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山田 壮志郎
- 出版者
- 一般社団法人日本社会福祉学会
- 雑誌
- 社会福祉学 (ISSN:09110232)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.1, pp.67-78, 2012-05-31
近年,一部の無料低額宿泊所が,ホームレスを対象とした貧困ビジネスであるとして社会問題化している.本稿の目的は,2010年に厚生労働省が行った調査の個票データを分析することを通じて無料低額宿泊所の現状を明らかにすることである.特に本稿では,無料低額宿泊所の特質である利用料の低廉性と居住の一時性について検討した.その結果,第1に,無料低額宿泊所の宿泊料は近隣の一般住宅の家賃と同程度以上であるが,居室の水準は一般住宅と同程度以上とはいいがたいことが分かった.また第2に,入所期間が1年以上の長期に及んでいる入所者が6割近くに上っており,その背景には入所者の生活保護費に関する地方負担の仕組みが一般住宅への転居を阻害していることがあると推測された.問題解決のためには,ホームレスに対する生活保護行政が無料低額宿泊所に依存することなく運用できる環境を整備することが必要である.