著者
太田 裕信
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.86, no.1, pp.53-78, 2012

西田幾多郎は自身の哲学を「宗教」と密接に関わるものとして考えていたが、その「宗教」に本質的な契機として「罪悪」の問題がある。西田はその問題を初期から晩年に至るまで、親鶯やキリスト教の思想に触れながら度々論じている。本稿では、西田がこの「罪悪」の問題を「場所の論理」という存在論においてどのように考えていたかを論じる。西田は『哲学論文集第四』(一九四一年)において、キェルケゴールの『死に至る病』に書かれた「罪」の思想に共感しているから、本稿はキェルケゴールの思想との関係を論究の手がかりとする。西田は「罪悪」を単に道徳的な局面のものとしてではなく、「作られたものから作るものへ」と言われる自己の存在論的構造において考えている。より詳しく言えば「罪悪」を「対象的自己意識」と「意志」という二つの契機から考えている。そして、この問題は「逆対応」などの根本概念において表現されている西田の「宗教」思想の本質的な契機となっているのである。

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