著者
田中 光
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.119-141, 2012

本稿は,20世紀初頭に制度化された,郵便貯金をその主な原資とする大蔵省預金部資金の地方還元機能について,実際にそれが投入された事例から具体的に明らかにしようとするものである。大蔵省預金部の地方への資金還元機能は,先行研究においてその金融制度内における重要性が指摘されてきたが,それは制度史や統計的概観に関する分析に留まってきた。郵便貯金はその設立にあたって細民の生活保全を目的としており,預金部資金の性質には一種の社会保障的な政策側面が付加されていた。しかし預金部資金はその後,地方経済振興資金としても扱われるようになっていった。1909年に預金部の地方還元は制度化された。1914年に行われた預金部資金による救済融資は,凶作や天災といった自然事象に対する救済ではなく,それ以外の経済的危機に対して預金部資金が大規模に投人された初の事例であった。そこに本稿は注目し,この救済資金から多額の融資を受けた長野県の事例から,制度の発動とその利用過程を具体的に追っていくことで,預金部資金の実態とその性質を考察する。

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CiNii 論文 -  大蔵省預金部資金の地方還元機能 : 1914年緊急救済融資と長野県 https://t.co/vvcr9kqmNk #CiNii

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