- 著者
-
松原 仁
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.111, no.419, pp.43-46, 2012-01-19
- 参考文献数
- 6
人工知能は人間のような知能を持った人工物を実現すること,あるいはコンピュータを道具として知能に関する知見を得ることを目標としている.人工知能における最初のグランドチャレンジはチェスであった.1950年頃から研究が始まって1997年にコンピュータチェスのディープブルーが世界チャンピオンのカスパロフに勝利した.チェスは探索や並列化など人工知能の数多くの技術的な発展に貢献した.チェスの次に来るゲームのグランドチャレンジは将棋と囲碁である.コンピュータ将棋は2010年に女流プロ棋士に勝利し,トッププロ棋士に勝つのももうすぐである.囲碁はチェスや将棋とルールが異なる特殊なルールなのでコンピュータはずっと弱かったが最近モンテカルロ法を使うことでアマ高段者のレベルに達している.ロボカップはチェスに代わる人工知能のグランドチャレンジとしてサッカーを選んだ.2050年までにワールドカップ優勝チームに勝つ人間型ロボットチームを開発することを目指している.アメリカで長い間楽しまれているクイズ番組に2011年にワトソンというコンピュータが出場して人間のチャンピオンに勝利した.日本では東大入試に合格する人工頭脳のプロジェクトも2011年に始まった(目標は2021年の合格である).ここでは人工知能におけるグランドチャレンジを概観してその意義について論じたい。