著者
園 知子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.10, pp.161-172, 2011-06-30

本稿は、「京都学派」(「京都ネットワーク」)およびその周縁において展開された「芸術家村」の知のネットワークを公共圏として捉え、これについて社会学的観点からの検討を目指すものである。その際、これらのネットワークの特徴は、知識人が独自の役割を演じたことにあるため、知識人を主体とした知の公共圏の構築が求められる。そこでまず、公共圏における知識人の在り方に問題関心を持つユルゲン・ハーバーマスの公共圏論、なかでも論説「ハイネとドイツにおける知識人の役割」に着目し、知識人の公共圏との関わりという観点からの分析作業を通じて、公共圏論に知識人をアクターとして位置づけ、公共圏における知識人の役割を明らかにするとともに、「京都ネットワーク」、「芸術家村」を捉えるための理論枠組みを提示している。続いて、「京都ネットワーク」を紹介し、これが公共圏であることを確認した上で、その専門領野を超えた独自の知の在り様を本稿の理論枠組みに沿って明らかにしている。また、これまで顧みられてこなかった「芸術家村」の存在を紹介・検討し、これを基盤とした國畫創作協會の設立という社会運動の存在を浮き彫りにしている。併せて、こうした事象の中から、本稿の理論枠組みに基づき、知識人と公共圏との相補的・相互不可欠的な関係性、ならびに、知識人が公共圏において果たす、知の媒介者としての役割およびオピニオン・リーダーとしての役割を明らかにしている。

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園知子, 2010, 「『京都ネットワーク』と『芸術家村』 : 公共圏における知識人論を分析視角として」『フォーラム現代社会学』 (10), 161-72. http://t.co/OV1SGOocrT

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