著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The journal of economic studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.49, pp.93-119, 2014-09

競争的労働市場においては, 賃金は限界生産力に等しくなり, 均等化する. しかし, 現実には産業間, 企業規模間において賃金格差は発生する. 賃金格差を人的資本理論に基づいた観察される個人属性の相違で説明を試みることには限界があり, 同一特性の労働者であっても格差は存在する. そのため, 観察されない個人属性, 効率賃金仮説等で残余部分を説明することが試みられてきたところである. 近年のデータ整備と統計解析手法の発展は, 観察されない個人属性や企業の賃金政策に起因する固定効果が賃金格差に重要な影響を与えていることを示した. 固定効果は労働市場における情報の不完全性といった摩擦に密接に関連していることから, 均衡サーチ・モデルを用いて賃金格差を説明することが試みられている. 代表的なモデルである BM モデルは労働者と企業のそれぞれの同質性と労働者の転職行動を前提として賃金掲示分布を決定するものであり, 応用範囲の極めて広いモデルである.

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