著者
小坂 啓史
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
no.6, pp.21-29, 2014-01-31

本稿は, 福祉社会学でのケアをめぐる研究において, ケアの場に対する相互行為分析の応用可能性, 有効性について検証することを目的とした方法論的考察であり, とくにエスノメソドロジーに焦点をあててその確認を行った. まず, ケアを 「ケア」 として成立せしめている状況は, その場における人びとの相互行為によってつくられることを確認した上で, 社会福祉の近接領域での比較的数少ない先行研究のうち, 2 つを検討した. その結果まず第 1 には, 科学的理論化の態度が他者理解の本質とはなりえず, それが根ざす他者と共にある社会的場面での実践においてケア (療育) が問われるべきで, そのための経験的研究が促されることについて確認しえた. また第 2 に, エスノメソドロジーの観点に基づくビデオエスノグラフィーを用いた研究について検討し, この方法がケアの場のように言葉を介さないような空間においても分析が有効であること, さらに社会福祉領域でのケアに関しても応用可能であるとみなされ, ケアという相互行為の社会学的解明にとって有効であることが確認できた.
著者
山田 壮志郎
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.128, pp.51-65, 2013-03-31

ホームレス問題が社会的排除の一つの典型であるならば, ホームレス対策は社会的包摂を志向するものであるべきである. 本稿の目的は, ホームレス状態の解消が社会的排除の克服に結びついているかどうかを検討することにある. そのために, 筆者がホームレス状態からアパート生活に移行した人々を対象として 2009 年に実施した調査の結果を用いて, ホームレス状態解消後の被排除状況を, 先行研究の分析枠組みに依拠しながら分析した. その結果, 第 1 に, 回答者の多くはホームレス状態を解消してもなお社会的に排除された状態に置かれていることが明らかになった. 第 2 に, 被排除状況には年齢階層による相違がみられ, 若年層では生活保護受給後の孤立化が, 高齢層では居住環境の低位性が課題となっていることがうかがえた. 第 3 に, 生活保護受給者の多くが, 社会的必需項目を剥奪されていることが明らかになった.
著者
山田 壮志郎
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.128, pp.51-65, 2013-03-31

ホームレス問題が社会的排除の一つの典型であるならば, ホームレス対策は社会的包摂を志向するものであるべきである. 本稿の目的は, ホームレス状態の解消が社会的排除の克服に結びついているかどうかを検討することにある. そのために, 筆者がホームレス状態からアパート生活に移行した人々を対象として 2009 年に実施した調査の結果を用いて, ホームレス状態解消後の被排除状況を, 先行研究の分析枠組みに依拠しながら分析した. その結果, 第 1 に, 回答者の多くはホームレス状態を解消してもなお社会的に排除された状態に置かれていることが明らかになった. 第 2 に, 被排除状況には年齢階層による相違がみられ, 若年層では生活保護受給後の孤立化が, 高齢層では居住環境の低位性が課題となっていることがうかがえた. 第 3 に, 生活保護受給者の多くが, 社会的必需項目を剥奪されていることが明らかになった.
著者
武田 宏
出版者
日本福祉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1990年の老人福祉法等8法改正(以下、「90年改革」)はわが国の市町村高齢者福祉行政に「計画化」と「分権化」という特徴を付与したが次のような三点の問題点が依然として残された。(1)市町村での実施財源が不明確なまま在宅福祉サービスおよび老人施設入所措置事務移譲がおこなわれた、(2)市町村は高齢者福祉サービスを社会福祉法人、社会福祉協議会、「福祉公社」など各種の民間団体に「外部委託」する傾向が強まった、(3)委託された団体では福祉労働者のパートタイム雇用、「有償ボランティア」を活用するなど、地域福祉労働組織の確立が不明確なばあいが多いことである。今年度の研究では以上の問題点に関して次のような調査・検討作業を行った。(1)地方財政統計を用いて1980年代の市町村福祉財政の分析を行うことにより、「90年改革」に先立つ、80年代の後半の社会福祉関係の事務配分・財源配分の変更が、市町村財政に国庫支出金比率の大幅低下という影響をもたらしたことを明らかにした。(2)老人保健福祉計画策定・実施においての市町村の財源が、特に在宅福祉サービス推進において十分でない点を明らかにした。(3)高齢者福祉サービスの民間委託に関しては、社会福祉法人への措置委託と措置費についての調査研究を行った。(4)外国の高齢者福祉の分権化動向に関してはイギリス等の文献研究とともにスウェーデンでの視察を行った。なお、上記(1)(2)に関しては別記のように研究成果の発表を行ったが、(3)(4)についてはその作業中である。
著者
水谷 なおみ
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.125, pp.83-102, 2011-09-30

本研究は, 障害者自立支援法移行期における就労支援事業所がどのように機能を選択したのかについて比較軸を用いて探索的に類型化を試みた. 具体的には, 事業内容が異なる 2 つの就労継続支援 B 型事業所に注目し比較事例研究を行った. 研究課題を明らかにする手段としては, 質的研究を選択し, 調査方法は, 半構造化面接法および参与観察法を用いた.その結果, 事業所がどのような機能を併せ持つかによって, 利用者の獲得する能力に違いが見られた. また, 利用者の生活課題を解決する要因は, (1)ミッションの達成に向けた事業が整備されていること, (2)利用者と職員に共通の認識枠組み (組織文化) が存在すること, (3)それらを継続・発展させる条件が必要であることが示された.
著者
末盛 慶
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.128, pp.35-50, 2013-03-31

本研究では, 性別役割分担がどのように変動していくのかを明らかにすることを問題意識としながら, 夫婦間交渉に関わる測定概念─クレイム行為─を設定した. クレイム行為とは, 夫婦・パートナー間で, 自分が要望することを相手に伝える行為のことである. 本研究では, 夫婦間のクレイム行為のうち, 妻が夫に家事や育児などをするように要求するクレイム行為に注目し, こうした行為がどのような要因によって促進されるのかを計量的に明らかにすることを目的とした. 分析対象は, 1 歳〜3 歳児がおり, 愛知県在住で, 父母が同居し, 雇用者であり, かつ育児休業を取得していない夫とその妻 421 組である. 分析の結果, 妻の学歴が高いほど, 妻の父親子育て優先意識が高いほど, 夫の性別役割意識が伝統的であるほど, 妻のクレイム行為が発生しやすいことが示された. 以上の結果から, 妻から夫へのクレイム行為は, 妻の学歴の高まり, ジェンダー意識の平等化, そして夫の役割分担度の低さによって促進されることが示唆された.
著者
篠田 道子 上山崎 悦代 宇佐美 千鶴
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.129, pp.15-38, 2013-09-30

本研究の目的は, グループインタビュー法により, 特別養護老人ホームと医療療養病床での, 終末期ケアにおける多職種の連携・協働の実態を明らかにすると共に, 両者の結果を比較し, 異同を明らかにすることである. その結果, 特養と医療療養病床の連携・協働で類似していたカテゴリーは, 多職種による情報交換, 本人・家族の希望に合わせたケア, 看取りのみに集中できないジレンマなど 8 つであった. 一方で, 異なっていた点は, (1)特養は縦型の指示体系を, 医療療養病床では横のつながりを重視, (2)特養は脆弱な人員体制を, 医療療養病床では医師や家族の指導・教育を改善すべきと考え, (3)特養は個人の力量不足を悔やみ, 医療療養病床では自分の力をもっと活用したいという意欲が見られた.
著者
前原 清隆
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ドイツ語圏諸国(ドイツ、スイス、オーストリア)におけるエコロジー憲法(エコロジーを構成原理とする憲法)について、学説や運動による構想、諸国の連邦および州(ラント、カントン)における実定憲法化の過程と現状を明らかにした。同時に、それが憲法に関する近代的な原理(人権の保障や民主主義など)との関係で一定の緊張関係にたつものでもあることを示唆した。
著者
西島 千尋
出版者
日本福祉大学
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.130, pp.175-191, 2014-09-30

近年,ドラムの音を声で真似ることを基本とするヒューマンビートボックスおよびボイスパーカッションが主に青壮年層を中心に広まっている.前者は,日本でも大会(Japan Beatbox Championship,日本ビートボックス協会)が行われるようになり,都市でも主にクラブやバーで「バトル」が開催されるなど知名度を増しつつある文化である.特に,インターネットの動画サイトやクラブカルチャーと結びついて発展しているという点で新しい音楽文化であると言えよう.しかし,ビートボックスおよびボイスパーカッションについての研究はごく少なく,その実態 ビートボクサーたちの動機,何に惹かれるか,どのように活動しているか は明らかではない.そこで,ヒューマンビートボックスおよびボイスパーカッションに携わる青年たちにインタビュー調査を試みた.その結果,彼らは必ずしも「インターネット」や「クラブカルチャー」に惹かれてビートボックスを行うのではないということ,むしろ,その手法を教え合ったり,日常生活のなかでの「遊び」として行ったりといった草の根的な要素が強いことが明らかになった.
著者
柏倉 秀克
出版者
日本福祉大学
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
no.130, pp.1-13, 2014-09-30

視覚障害生徒が使用する点字教科書は通常の教科書(原典教科書)を点訳したものであるが,近年教科書のビジュアル化が進んだことによって点訳は困難を極めている.本研究では文部科学省が編集した特別支援(盲)学校中学部社会科教科書編集における新しい試みを抽出するとともに,視覚障害生徒にわかりやすい教科書とするための具体的な配慮について明らかにすることを目的とする.調査の対象としたのは,(1) 2012 年度に編集された特別支援(盲)学校中学部社会科教科書,(2)同教科書編集会議資料,(3)同教科書編集資料である.調査の結果,点字教科書の分冊化における単元等配列上の配慮,視覚障害生徒が触察する上で分かりやすいレイアウト,写真・絵・イラスト・表・グラフ・地図を点訳する際の新しい試みが明らかになった.さらに点字使用生徒と同一の教室で学ぶ機会の多い弱視生徒向け拡大教科書との関連について考察した.