著者
和氣 晃司
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.225-229, 2012-10-25

「災害はいつ起こるかわからない」,よく耳にする言葉であるが,2011 年3 月11 日の東日本大震災も前ぶれなく突然に発生した.三陸沖を震源とするマグニチュード9.0 の地震 (観測史上国内最大規模) とそれに続く大津波によって多数の尊い生命が犠牲となった.またそれに続く福島原発事故も発生し,今なお多くの方々が辛い生活を強いられている.従来,わが国では首都直下型地震,東海地震,東海・東南海地震など大規模な災害を想定して様々な対策を講じてきた.しかし,先の東日本大震災は全くの想定外だったという.阪神・淡路大震災など今までの大地震では,局地的な家屋の倒壊とそれに続く大規模な火災が問題であった.しかし,東日本大震災では東北地方から北関東にかけて大規模な津波が到来し,死者・行方不明者合わせて約2 万人という極めて多数の犠牲者が発生した.さらに福島原発からの放射能汚染を合併する甚大広域災害となってしまった.規模の大小にかかわらず,災害が発生すると当該地域は大混乱となり,近隣周辺地域も少なからず影響を受けることになる.そのような状況に遭遇した時,われわれはどのようなことに留意して医療活動を行うべきであろうか.本稿では,救急医学の立場から行うべき災害急性期の活動やそのための組織体制の紹介,さらには獨協医科大学病院として災害医療に臨むための準備,特にマニュアルの作成と効果的な訓練の必要性について述べる.

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