著者
河村 徳士
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.179-201, 2010-08-25

本稿は,1920年代前半に指摘された小運送料金問題とその対応を検討し,26年6月に実施される合同政策の背景および業界がこれを受容する条件を考察するものである。この時期,荷主や鉄道省は小運送料金の高さを問題とした。それは,第一次大戦期に指摘された高額請求とは,小運送料金の水準自体の引下げを求めた点て異なるものであった。しかし,何らかの合理化策を施さない限り料金低下を実現することは困難な状況にあった。鉄道省は,料金低下には合同政策が必要であると判断し始めていた。一方,業界では,大戦後の需要減退を契機として競争が激化し,不当な手段に訴えた値下げ競争,違法性の強い取引を利用した荷主獲得競争が展開された。こうした不正な競争への関与を余儀なくされつつあった業界では,何らかの競争抑制策が求められていた。合同を通じた運送店数の減少により競争が抑制される効果を期待できる点て,合同政策を受容する条件が形成されていたのである。

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