- 著者
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高橋 秀直
- 出版者
- 社会経済史学会
- 雑誌
- 社会経済史学 (ISSN:00380113)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.1, pp.27-45, 2009
本稿の目的は,ポンド直物・先物相場が急落した1931年7月から9月にかけての「ポンド危機」に,ロンドン先物為替市場が与えた影響を再検討することであり,そのために「ポンド危機」以前のロンドン外国為替市場における相場の水準とビット・アスクスプレッドの動きを検討する。1920年代のロンドン外国為替市場において,先物為替取引が台頭し,テレフォンマーケット化に伴い価格形成上ビット・アスクレート情報がより一層重要になっていたことを踏まえ,新たに『フィナンシャル・タイムズ』紙の日次データを利用することにより,1931年7月のポンド相場の急落を再確認し,さらに同年1月に直物・一ヵ月物先物ポンドには変化はないが二ヵ月物・三ヵ月物先物ポンドが急落していたことを明らかにする。このことは,「ポンド危機」開始以前から国際的金利裁定に組み込まれていたことによってロンドンに既に十分に定着・機能していた先物市場の存在は,ひとたび金本位制維持可能性に関わる何らかのきっかけがあれば,相場急落というシグナルを送ることでイギリスに金本位制離脱を促す可能性を内包していたことを意味する。