著者
江村 早紀 大久保 智生
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.241-251, 2012

本研究の目的は,個人-環境の適合性の視点から適応状態を測定する小学生用の学級適応感尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討すること(研究1)と作成された学級適応感尺度と学校生活の要因(教師との関係,友人との関係,学業)との関連を学級の特徴別に検討すること(研究2)であった。研究1では,因子分析の結果,「居心地の良さの感覚」「被信頼・受容感」「充実感」の3因子が抽出された。作成された学級適応感尺度は,信頼性と妥当性を有していると考えられた。研究2では,担任教師が認知している学級雰囲気をもとに学級を分類して,学級への適応感と学校生活の要因との関連について重回帰分析を用いて検討した。その結果,学級への適応感と「友人との関係」が最も強く関連する学級もあれば「教師との関係」が最も強く関連する学級もあったように,学級への適応感と学校生活の要因との関連の仕方は学級により異なっていた。また,どの学級においても「教師との関係」が児童の適応感と正の関連を示すという点で,青年の適応感と異なっていた。以上の結果から,学校における児童の適応感を検討する際には,学級集団の重要性や学級担任制という小学校固有の制度などの特色を考慮して,学級の特徴を踏まえたうえで,研究を行っていく必要性が示唆された。

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