- 著者
-
金政 祐司
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.3, pp.298-309, 2012
本研究は,成人の愛着関係として捉えられる青年期の恋愛関係ならびに中年期の夫婦関係において,相互の支援が関係満足度と精神的健康に及ぼす影響の過程に関して,多母集団同時分析を行いその共通性と差異について検討することを目的として行われた。調査対象者は,104組の青年期のカップルならびに156組の中年期の夫婦であった。分散分析の結果,支援に関する変数(「本人の支援期待」,「相手の支援遂行度」,「本人による相手支援の認知」)ならびに関係満足度については,中年期の夫婦関係よりも青年期の恋愛関係においてそれらの得点は高く,また,本人の支援期待については男性よりも女性の方が高いことが示された。精神的健康は青年期の恋愛関係よりも中年期の夫婦関係において良いことが示された。加えて,相互の支援が関係満足度と精神的健康に及ぼす影響の過程についての分析の結果,中年期の夫婦関係においては,「本人の支援期待」が「相手の支援遂行度」を促進し,「本人による相手支援の認知」に影響を及ぼしていたが,青年期の恋愛関係においてはそのような傾向は認められなかった。また,「本人による相手支援の認知」が関係満足度に対してポジティブな影響を及ぼし,さらに,関係満足度が精神的健康に影響するというプロセスについては双方の関係において認められた。それらの結果について青年期の恋愛関係と中年期の夫婦関係の共通性と差異の観点から議論を行った。