著者
赤羽 由起夫
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.104-118, 2012

本論の目的は,少年犯罪と精神疾患の関係の語られ方の内容とその歴史的な変遷の分析を通じて,1990年代以降の少年犯罪の医療化の特徴を明らかにすることである.そのために本論が分析資料として用いるのは,終戦から現在までの『朝日新聞』,『毎日新聞』,『読売新聞』の縮刷版から選出した精神疾患に言及のある少年犯罪の記事,および精神疾患についての記事である.分析の結果,明らかになった知見は,次の三点である.第一に,終戦から1970年代までに少年犯罪と関係づけられて語られた主な精神疾患には,精神分裂病,精神病質,精神薄弱,ノイローゼがある.第二に,1990年代以降に少年犯罪と関係づけられて語られた主な精神疾患には,行為障害と発達障害がある.第三に,1990年代以降の少年犯罪の医療化の背景には,第一に,精神疾患が指摘されやすい「普通の子」による少年犯罪が社会問題化したことと,第二に,教育問題までも包含する精神疾患として行為障害と発達障害の概念が登場したことがあげられる.

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