- 著者
-
赤羽 由起夫
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.19-32, 2017 (Released:2018-10-31)
本論文の目的は,脳科学と少年観の関係について,社会学的にどのように捉えたらよいかを考察す ることである. 現代の日本では,脳科学の知識や技術の広がりが,さまざまな影響を社会に及ぼしている.ここで は,脳科学の知識や技術が社会に普及し,影響を及ぼしていく過程を「社会の脳科学化」と呼ぶ.本 論文では,社会の脳科学化が脳科学と少年観の関係にもたらす影響について議論する.議論の結果は, 以下の5点にまとめられる. 第1に,脳科学と少年観の関係を捉えるためには,あらゆる脳科学の使用法を考慮する必要がある. 第2に,社会の脳科学化を促進する社会的文脈としては,新自由主義的な主体像の浸透が有力な仮説 の1つである.第3に,少年に対する処罰と教育の関係については,なにが社会化すべき能力とみな され,どのくらいその能力の発達可能性があるとみなされているのかを見る必要がある.第4に,少 年に対する治療と教育の関係については,なにが逸脱とみなされ,どのように脳科学の知見が使用さ れるのかを見る必要がある.第5に,少年に対する事前統制と事後統制の関係については,それらの 重点の変化を見る必要がある.