- 著者
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上垣 豊
- 出版者
- 龍谷大学龍谷紀要編集会
- 雑誌
- 龍谷紀要 (ISSN:02890917)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.2, pp.137-152, 2013-03
本稿は、19世紀のフランスにおけるカトリック若者運動について、近年の研究をもとに、社会事業と学校教育との関わりで、概観を試み、研究上の課題を整理しようとしたものである。1886年に創設されたカトリック青年会 (Association catholique de la jeunesse francaise、以下ACJFと略) はカトリックの自律した若者運動として、その後大きく発展する。本稿ではACJFの創設と、それ以前からあったサン=ヴァンサン=ド=ポール協会 (Societe de Saint-Vincent-de-Paul、以下SVP協会と略) やカトリック労働者サークル事業団の影響関係、系譜関係を探り、イエズス会の関与も含め、ソシアビリテ(社会的結合関係)の変容という視点からカトリック・エリートの若者運動を検討し直した。その結果、学習集団としてのコンフェランス (conferences)、イエズス会経営学校内に組織された聖母信心会の重要性、俗人とカトリック教会との関係の見直し、SVP協会の民主的な組織にたいして、サークル事業団の軍隊的規律の問題などが、課題として浮かび上がってきた。