著者
白戸 由理 中野 和俊 中山 智博 大澤 眞木子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.E91-97, 2013-01

【目的】,従来ミトコンドリア(Mt)は細胞外では培養不可能とされてきた。中野らはヒトの血小板とHela mitochondria-less (Rh0)を融合させたCybrid細胞を形質変換させ、Mtの性質を保ちながら核のない細胞株の分離・増殖に成功し、ミトコンドリア細胞(MitoCell)と命名した。MitoCellの生物学的特性を見いだすため、エネルギー代謝の検討を行った。,【対象・方法】, MitoCellの嫌気培養は嫌気培養キットでO2濃度を0.1%以下とし、CO2濃度が21%前後、温度は37℃で培養し光学顕微鏡にて観察した。次に、エネルギー代謝経路の検討のため、MitoCellのTCA回路のクエン酸合成酵素(CS)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、サクシネート脱水素酵素(SDH)、イソクエン酸脱水素酵素(IDH)とピルビン酸脱水素酵素(PD)をウエスタンブロット法により解析した。さらに、MitoCellの電子伝達系酵素(ETE)活性とTCA回路の酵素活性と検討するため、Cybrid細胞を対照としてETEである複合体II+III、IVとCS活性を測定した。,【結果】,MitoCellでは嫌気的環境下でも4週間の観察で生存・増殖が認められた。ウエスタンブロット法ではMitoCellのCSのみが陽性、PD、MDH、IDH、SDHが陰性であった。酵素活性では、MitoCellは複合体II+III、IVの活性は保たれているがCS活性は欠損していた。,【考察】,MitoCellではTCA回路が好気的代謝経路として機能していない可能性が示唆され、嫌気的代謝経路の関与が推測された。MitoCellが真核細胞であるヒト細胞から形質変換したことを考えると、ヒトの核DNAには嫌気的代謝遺伝子が保存されていると推測され、嫌気的代謝経路が賦活化されたとも考えられる。臨床上がん細胞は体内において低酸素下で存在し嫌気的代謝の関与が示唆されている。MitoCellのエネルギー代謝経路の解明は、がん細胞の治療に繋がる可能性が考えられた。,【結論】MitoCellでは嫌気的環境下でも生存・増殖が認められ、低酸素下で存在し嫌気的代謝の関与が示唆されているがん細胞の性質と関連している可能性が示唆された。

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しかも、嫌気的環境下でも4週間生存・増殖したとのこと。日本語で書かれた抄録読んだだけだし、大学の紀要に載っただけの論文らしいけど、その後再現性とかきちんととれてるのかしら? https://t.co/i556Bfobje
@minori_ironim 雑誌が怪しめですが、培養できるみたいですね〜。 本当かな。https://t.co/Qyd1GHZdC7

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