著者
池辺 寧
出版者
日本介護福祉学会
雑誌
介護福祉学 (ISSN:13408178)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-26, 2007-04-01

ハイデガーは,現存在(人間存在)とはつねになにかを気づかっている存在であると規定し,現存在の根底に気づかい(Sorge)という構造を見いだした.Sorgeを英訳するとcareとなる.そのため,ハイデガーの哲学はケア論として解釈されることがある.だが,ハイデガーが用いている気づかいという語は存在論的な概念であり,ケアという語で一般に理解されている内容とは異なる.本稿では従来みられる誤解を指摘したうえで,ハイデガーの哲学を手がかりにして,他者をケアすることの哲学的基礎づけを試みた.その際まず,ハイデガーが現存在を他者との共同存在ととらえている点に着目した.現存在は他者との共同存在であるから,他者をケアする存在となる.次に,ハイデガーが他者に対するかかわり方として行っている顧慮の分析を取り上げた.支配と支援を両極端に据える彼の分析は,介護や看護のあり方を考えるうえで示唆に富む.

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