著者
辻 大介
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 2003

私たちのおこなうコミュニケーションを,物理的・機械的な情報伝達とは十分に区別されるように記述できるかどうかが,理論社会学にとってはひとつの試金石となる.本稿ではその可能性をH.P.グライスの非自然的意味の理論に求める.それは,発話者が何ごとかを意味する(コミュニケートする)ということを,発話者のもつ自己参照的意図から分析するものである.それに対しては,コミュニケーションにおける言語規約的要素を重んじる立場と,自己参照的意図の無限背進を懸念する立場から,批判が提出されてきた.これらの批判は個別の論点をもつため,これまでは分け離して扱われることが多かったが,本稿ではそれらをあわせて考察することをとおして,最終的に,コミュニケーションにおける自己参照的意図と言語の規範性が根源的な関係をもつものであることを示し,グライス流の意図によるコミュニケーションの記述に,社会(学)的記述と呼ぶにふさわしい資格を与える.

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