著者
古城 慶子 坂元 薫 石郷岡 純
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.29-37, 2013-02-25

本稿では急性妄想幻覚状態後の推進低下期に焦点を当てて、病相期性経過段階を構成するpostpsychotic depression(PPD)と単極性ないしは双極性うつ病との間に症状構成、薬物療法および転帰に差異があるか、比較検討した。対象は5年以上経過を確認できた内因性精神病45例を母集団として経過のいずれかの時期にRDCによって統合失調症、統合失調感情病、特定不能の機能性精神病と診断され、しかも妄想ないしは幻覚が前景にある20例のうち推進低下期が後続するもの9例である。RDCによってそれらの推進低下期の横断面病像を診断すると、定型うつ病(D;2例)、準定型うつ病(d;4例)、その他の精神医学的障害(OPD;3例)であった。これらとRDCで規定した単極性うつ病(13例、病相数44)および躁病後に引き続くうつ病(10例、病相数12)とを比較した。PPDのDおよびdと単極性ないしは双極性うつ病のDおよびdとの比較では症状構成および炭酸リチウム療法以外の薬物療法に差はなかった。病相持続期間はPPDが単極性あるいは双極性うつ病相に比べ有意に短い傾向にあった。PPDのDおよびdとPPDのOPDとの比較では抑うつ気分と睡眠覚醒障害に差が認められたが、薬物療法と持続期間に差はなかった。PPDには明瞭な抑うつ症候群と推進低下症候群としかいえないものとがあったが、両群ともに積極的な抗うつ療法によって短期間で寛解していたことからうつ病の軽症型の可能性が示唆された。

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