著者
杉下 佳文 上別府 圭子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.444-450, 2013-01-01
参考文献数
21

周産期は,気分障害が出現しやすくうつ病の時点有病率は10〜15%である。一方で,子ども虐待死亡事例における実母の精神的問題は「うつ状態」が約3割を占め,全国で産後うつ対策が展開されている。死亡した子どもの年齢は,生後0日児の割合が高いことから,虐待死は母親の妊娠期の精神状態に左右され,妊娠期からの抑うつが関連していることが考えられる。産後うつをスクリーニングする尺度はエジンバラ産後うつ病自己評価票(以下EPDS)が広く使用されているが,妊娠期の使用は検討段階であり,欧米においても妊娠期EPDSの得点と産後うつ病発症予測の的中率については議論中である。そこで,妊娠期におけるEPDS使用の臨床応用および妊娠うつと産後うつの関連についてEPDSを用いて検討することの2点を研究の目的とした。定期妊婦健康診査で同意が得られた妊婦161名に妊娠期と産後の2時点でEPDS調査を行った。参加率は79.4%,質問紙回収率100%,産後回収率85.0%であった。妊娠期EPDS高得点者は14.3%であり,産後EPDS高得点者は19.8%であった。妊娠期EPDSの高得点者が産後EPDS高得点者になる相対リスクは17.0であり,両者には中程度の相関が確認された。妊娠期にEPDSを使用することは,産後うつ疑いを抽出する意味があり,臨床への応用が示唆された。

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