著者
長谷川 智子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.384-394, 2012

本研究の目的は,食発達における貧しさと豊かさを論じるために,生態学的な視点からマクロ水準とミクロ水準における食の現状を検討することであった。マクロ水準では,世界における貧困と飢餓,飽食と肥満の現状をとらえた上で,世界的な規模のフードシステムが生みだしている貧困と肥満を論じた。ミクロ水準では,日本での個人の食卓において,主に食における相互作用の貧しさを検討した。これらのことを踏まえて,マクロ水準とミクロ水準での食の豊かさとは何であるかが議論された。すなわち,マクロ水準での食の豊かさとは,生産と消費がより民主化されること,消費者がフードシステムの現状を理解した上で主体的に食品選択ができること,食文化が新たに創出されることであった。ミクロ水準での食の豊かさとは,子どもが家族や仲間から人間として受容されながら共食をすることだけでなく,動植物の命をいただく感謝の気持ちをもち,家族や仲間と一緒に料理をして自分たちの食べ物を作り出すことである。このような豊かな食であれば,発展途上国の貧困な食においても家族や大切な人とのつながりのなか実現できることが示唆された。

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