著者
藤田 英典
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.439-449, 2012-12-20
被引用文献数
2

1990年代半ば以降,貧困・経済的格差が新たな社会問題として浮上し,子どもの生活・福祉・教育機会や発達にも深刻な影響を及ぼすようになった。本稿では.その現代的な貧困・格差の実態・特徴と子どもへの影響について,学力形成・教育達成と児童虐待を中心に,以下の構成で検討・考察している。(1)現代の貧困・格差や文化・社会のありようを踏まえ,その環境諸要因が子どもの発達の諸側面に及ぼす影響について仮説的な概念図を提示し,貧困が及ぼす影響の重大性を指摘する。(2)貧困・経済的格差の実態と子どもの教育達成・学力形成に及ぼす影響について種々の統計データに基づき検討し,貧困・格差の構造的複合性を指摘し,教育格差・学力格差の生成メカニズムについて経済的要因と文化的要因・社会心理的要因・学校要因が重なり合って格差が生成されていることを論じる。(3)児童虐待の実態とリスク要因について検討し,貧困が,単親家庭や孤立・育児疲れ等と相まって,その主要なリスク要因になっていることを確認する。(4)貧困・格差の再生産の傾向が強まっていることを確認し,今後の政策的・社会的課題について若干の私見を略述する。

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