著者
浦 和男
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 (ISSN:09145729)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.41-69, 2009-03

文明開化とともに西洋の笑話が原文で紹介されるようになる。新聞・雑誌類では明治10年以降の掲載が確認され、明治25年には福沢諭吉が「開口笑話」を出版し約350篇の笑話を紹介した。明治30年代後半になり、西洋の笑話を利用した英語学習書が相次いで出版され、英語読本類にも笑話が掲載される。その背景には、明治20年代後半からの英語教育の普及と産業発展による英語ブームと、文法に重点を置かない実用英語指向の高まりがある。また、この時期には新しい「笑い」を求める雰囲気があり、西洋の笑話の英語学習への利用が高まったとも考えられる。原文による笑話の学習を通じて、明治期の読者は多文化に接触し、日欧に共通する笑いの存在を知ることで、日本人が異質でないことを知ることができた。これらの英語学習書の英語教育的な意義、扱われた西欧笑話の日本の笑いへの定着、近代文学への影響など、今後検討しなけらばならない問題は多く残されている。

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