- 著者
-
山本 伸幸
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.55-62, 2013-03
- 参考文献数
- 43
今般の森林・林業再生プランの議論においても同様だが,経営受委託の遙か彼方にあるエル・ドラードとして,森林の信託はしばしば言及される。もちろん周知の通り,森林組合法9条は「組合員の所有する森林の経営を目的とする信託の引受け」を組合事業の1つに掲げており,僅かながら事例もある。また,2006年の信託法全面改正や金融関連企業の森林問題へのコミットメント増加などの要因もあって,森林信託の言葉を耳にする機会も最近多い。しかしながら,森林の信託性に関する考究は少なく,その森林経営・管理に対する意義などの実像は依然として不鮮明なままである。本小論では,これまでの森林の信託性に関する歴史と議論および最近の実例を踏まえ,予備的考察を行うことを課題とした。その結果,1)戦前期に構想された商事信託,2)1987年森林組合法改正時の分収林事業,森林レクリエーション事業普及の政策手法,3)施業集約化手法,4)公有林経営受託,の1つの構想と3つの事例を確認した。