著者
石井 恭子
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.35-45, 2012

本研究は,日本の理科教育における「探究の過程」の導入とその問題点を明らかにするためにアメリカの改革プログラムが日本に導入された経緯を当時の文献を基に検討したものである。2008年の答申では,知識・技能の育成と考える力の育成が対立的にとらえられてきたが,これらを相互に関連させながら伸ばすことが重要とされ,特に理科教育においては,系統学習と探究(問題解決)学習の対立が常に論じられながら今日に至っている。これは,教育の現代化と呼ばれた1960年代,「探究」や「科学の方法」ということばを表面的に受容したことに原因があると言われている。そこで本研究では,主として1960〜70年代の「探究の過程」受容の経緯と問題点を,アメリカの科学教育改革の導入,特に「現代化」という視点から検討する。研究の方法としては,当時の日本の理科教育雑誌等における言説分析による。特に学習指導要領の執筆に関わった人物の言説に注目する。その結果,以下の三点が明らかになった。第一に,現代化の導入に際して,知識偏重教育の否定と子どもの自発性を強調するあまり,教師が教え込まずに子どもが理解することをめざすという趣旨が,教師は教えなくてよいという論調に変化したことである。第二に,紹介から導入までの時間が短く,十分な検討ができなかった点である。第三に,実践研究の知見がカリキュラム編成に生かされなかった点であり,教育課程編成のあり方の課題でもある。

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