著者
柴田 清孝
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.709-722, 2013-09-30

厳冬期の2013年1月12日に凍結した風蓮湖(根室)ごしに距離10〜20kmの範囲に1つの虚像の下位蜃気楼と数個の虚像の上位蜃気楼を併せ持つ蜃気楼が観測された.この蜃気楼について安定成層の温度プロファイルを仮定してレイ・トレーシングを行い,観測された蜃気楼を定性的に再現することができた.また,これらの成因について調べ,曲率半径のプロファイルが極小層をもつとき,その近辺の全反射による光が蜃気楼を形成することがわかった.極小層の下に極大層がある場合は,この層によるあまり曲げられないレイが重なり,ある距離で多像になる.下位蜃気楼のみがある場合も安定成層による全反射で再現することができた.曲率半径の極値の高度は温度の変曲点高度に対応し,安定成層で温度が下に凸から上に凸に変わる変曲点で曲率半径は極大,逆に上に凸から下に凸に変わる変曲点で曲率半径は極小になる.さらに,複数の距離で複数の虚像を示す蜃気楼は大気の温度構造の情報量を多く含むので,逆問題を解くには有利であり,蜃気楼から温度構造が得られる可能性について言及した.

言及状況

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