- 著者
-
福井 至
- 出版者
- 一般社団法人日本認知・行動療法学会
- 雑誌
- 行動療法研究 (ISSN:09106529)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.2, pp.57-70, 1998-09-30
本研究の目的は,抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定するための質問紙を開発し,抑うつと不安の相関を認知内容から説明できる認知行動モデルを構築することであった。抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定する項目選択とそれらの項目についての因子分析の結果,「将来否定」「脅威・嫌悪状況予測」「自己否定」「過去・現在否定」「状況の脅威度・嫌悪度」の各10項目ずつの5つの下位尺度からなるDACSが作成された。またDACSとDepressionandAmdetyMoodScaleを用いた共分散構造分析から,「抑うつ気分」は「将来否定」から引き起こされ,この「将来否定」は「過去・現在否定」と「自己否定」から引き起こされること,他方「不安気分」は「抑うつ気分」と「脅威・嫌悪状況予測」から引き起こされ,この「脅威・嫌悪状況予測」は「過去・現在否定」と「状況の脅威度・嫌悪度」から引き起こされることが示された。これらの結果から,抑うつと不安の両者を引き起こす共通の認知内容の「過去・現在否定」によって抑うつと不安の相関が説明できる,新しい抑うつと不安の認知行動モデルが構築された。