著者
石川 利江 佐々木 和義 福井 至
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-17, 1992-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
18

本研究の目的は,2つの社会的不安尺度,Fear of Negative Evaluation Scale(FNE) SocialとAvoidance and Distress Scale(SADS)の日本版標準化であり,健常者300名と対人不安を訴える32名の被検者を調査対象として両尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことである。その結果,以下のようなことが明らかになった。(1)日本版FNEとSADSの内的整合性は充分高いものである。(2)両尺度は因子的妥当性,臨床的妥当性が高く,社会的不安の高い者を判別できる尺度である。(3)再テスト法によって得られた両尺度の信頼性係数は,臨床的に用いる質問紙としては充分高いものである。(4)両尺度は,MASとSTAIと有意な高い相関が得られた。したがって,日本版FNEとSADSは,臨床的あるいは研究上の有用性が高いものであることが示唆された。本研究の結果は,社会的不安理論の枠組みで論じられた。
著者
福井 至 大橋 靖史 菅野 純 重久 剛 春木 豊
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.12-19, 1991-03-31 (Released:2019-04-06)

親の性格,養育態度(強化モード)と子の性格との関係について検討した。被験者は日本人9才児男女245名で,本人,母,父のそれぞれについて性格と強化モードを測定するために作成された質問表に,2件法で解答した。子の性格と親のそれぞれの性格はWPQ(EPQ改訂版)の向性(Ex),情動性(Em),タフ・ソフト傾向(To),社会的技能性(Di),自己実現性・愛他性(Sa)の次元について,子が解答した得点に基づくものである。親の養育態度は,IRS(人間関係診断テスト)の「押し付け」(Fr),「任せ」(Lr),「受けとめ」(Cr),「認め」(Adr)のモードについて,子どもが解答した得点である。5次元,4モードのうち,子の向性と父の向性,子の自己実現性・愛他性と母のタフ・ソフト傾向,そして父の情動性,タフ・ソフト傾向に高い相関がみられ,また子の向性は母の押し付け強化,認め強化,そして父の押し付け強化との間に高い相関を示した。以上の結果から,子の性格が,遺伝と環境の双方に深いかかわりをもつ手がかりが示唆された。
著者
佐藤 洋一 福井 至 岩本 隆茂
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-62, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、福井・西山(1995)の作成した、論理情動行動療法に基づくComputer-AssistedCounselingのためのコンピューター・プログラムを基盤に、より実用性の高いプログラムを作成して、その効果を検証することであった。福井・西山(1995)のプログラムはJapanese Irrational Belief Test(松村,1991)の項目を用いて、不合理な信念を合理的な信念に変容するものである。しかし福井・西山(1995)の手続きでは1セッションあたりの所要時間が非常に長くなる恐れがあり、実用性に乏しいため、本研究では実施回数は変えずに、1セッションあたりの所要時間が50分程度でおさまるプログラムとした。また、論理情動行動療法のABCモデルの説明を加え、さらに不合理な信念をもっている場合の損な点と得な点を考えてくるというホームワークを追加した。実験の結果、本プログラムには、福井・西山(1995)のプログラムと同等以上の不安低減効果があることが示された。
著者
石川 利江 佐々木 和義 福井 至
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.10-17, 1992-03-31
被引用文献数
3

本研究の目的は,2つの社会的不安尺度,Fear of Negative Evaluation Scale(FNE) SocialとAvoidance and Distress Scale(SADS)の日本版標準化であり,健常者300名と対人不安を訴える32名の被検者を調査対象として両尺度の信頼性と妥当性の検討を行うことである。その結果,以下のようなことが明らかになった。(1)日本版FNEとSADSの内的整合性は充分高いものである。(2)両尺度は因子的妥当性,臨床的妥当性が高く,社会的不安の高い者を判別できる尺度である。(3)再テスト法によって得られた両尺度の信頼性係数は,臨床的に用いる質問紙としては充分高いものである。(4)両尺度は,MASとSTAIと有意な高い相関が得られた。したがって,日本版FNEとSADSは,臨床的あるいは研究上の有用性が高いものであることが示唆された。本研究の結果は,社会的不安理論の枠組みで論じられた。
著者
福井 至
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.57-70, 1998-09-30

本研究の目的は,抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定するための質問紙を開発し,抑うつと不安の相関を認知内容から説明できる認知行動モデルを構築することであった。抑うつと不安を引き起こす認知内容を測定する項目選択とそれらの項目についての因子分析の結果,「将来否定」「脅威・嫌悪状況予測」「自己否定」「過去・現在否定」「状況の脅威度・嫌悪度」の各10項目ずつの5つの下位尺度からなるDACSが作成された。またDACSとDepressionandAmdetyMoodScaleを用いた共分散構造分析から,「抑うつ気分」は「将来否定」から引き起こされ,この「将来否定」は「過去・現在否定」と「自己否定」から引き起こされること,他方「不安気分」は「抑うつ気分」と「脅威・嫌悪状況予測」から引き起こされ,この「脅威・嫌悪状況予測」は「過去・現在否定」と「状況の脅威度・嫌悪度」から引き起こされることが示された。これらの結果から,抑うつと不安の両者を引き起こす共通の認知内容の「過去・現在否定」によって抑うつと不安の相関が説明できる,新しい抑うつと不安の認知行動モデルが構築された。