著者
市川 新
出版者
特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.101-111, 2009-08-25

小学校から大学まで,教師は教室で定義の曖昧な学力低下問題に直面し苦慮している.本稿では,教師がゲーミング教育を実践する場合,技術(the art of facilitation)を理論(the science of learning)に連携することを強く主張する.現行の学校制度は昭和20年代前半に民主主義教育とともに導入された.小中高では,当初,手探りであったが経験主義教育が実践された.実践事例の多くは現代のゲーミングに連なる優れた「ごっこ遊び」(模擬演習に対する当時の蔑称)であった.それに対して,学力低下という批判を受け,「ごっこ遊びの理論と技術」を主張できないまま,昭和38年までに学校教育の現場から経験学習は一掃され,産業社会が求める画一的知識伝達教育に移行した.これも制度疲労を招き,記憶量よりも発想・意欲・態度を重視する新学力観による批判を受けることになる.平成14年,小中高で総合的な学習が必修化され,一斉に実践されることになる.考えてみると総合的な学習は,大学の教育研究集団に参加し研究態度を学ぶことの実践と変わりない.しかし,進学率50%以上の大学教育を含めて,再び,学力低下批判を受けつつある.歴史を繰り返さないためには,ゲーミングを実践する教師のファシリテーションに,自己の探求する態度を教室で示すことが必要である.総体認識言語であるゲーミングの教育的価値は,教師の探究する態度を伝承するところにある.

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