著者
山崎 諭 小市 俊悟 鈴木 敦夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.31-52, 2013-12

本研究では,災害時に代替経路が確保された道路ネットワークを実現するために,どの道路を改良すればよいかという問題に対して,解決への一つの指針を示す数理モデルを提案する.そのために,まず,代替経路の厳密な定義を与えた.その定義は,災害時における道路寸断に対する耐性と,目的地までの所要時間に着目した定義となっており,それを満たす経路を増加させることで,災害に備えた道路ネットワークの実現を図る.提案する数理モデルにおいて,改良すべき道路は線形計画問題の解として得られる.その線形計画問題は,最短経路問題の感度分析により得られる情報と,最短経路と代替経路の候補となる経路の重複率を用いて定式化される.また,その問題は連続型ナップサック問題へ書き換えることができ,それにより,改良する道路の優先順位も明確になる.具体的な問題例として,(i)愛知県庁と大阪府庁間,(ii)愛知・静岡県主要都市間,および(iii)関東の一部の主要都市間について,既存道路の整備による代替経路の確保を想定した計算機実験を行った.(i)については,平成7年の道路データを用いたところ,平成17年開通の新名神高速道路に類似した経路が得られたが,これは本研究で提案するモデルの有効性を示していると考えられる.(ii)については,平成15年の道路データでは,新たに得られる代替経路は沿岸部を通る経路に限られるが,それに新東名高速道路のデータを加えたところ,浜松・静岡間に新東名高速道路を用いた代替経路を確保することができた.この結果は,本研究で提案するモデルの有効性を示すとともに,新東名高速道路により静岡県の道路ネットワークが危惧される東海地震に対して頑健になったことを示すものと考えられる.(iii)については,災害時に機能する代替経路が得られる一方で,改良予算によっては既存の代替経路が消失することを紹介する.これは,改良予算のみを制限とする提案モデルの問題点とも言え,今後の課題である.

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