- 著者
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小西 いずみ
井上 優
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, no.3, pp.33-47, 2013-07-01
富山県呉西地方には動詞尊敬形「〜テヤ」があり,南部の井波では継続相,北部の高岡では非継続相を表す。いわゆる「テ敬語」にあたる形とされてきたものだが,両方言とも基本終止形〜テヤが連体形・疑問形にもなり,このヤをコピュラとはみなせない。井波方言では,否定形が「〜テ(ン)+補助形容詞ナイ」であること,アクセントが「〜テ+補助用言」に準じることから,「〜テ+助動詞ヤ(コピュラとは別語)」と分析でき,高岡方言では,否定形が〜ンデヤとなること,アクセントが中止テ形やタ形に準じることから,テヤを一つの接尾辞だとみなせる。井波より南の五箇山には「〜テ+存在動詞アル」に由来する継続相尊敬形「〜テヤル」があり,井波のテヤはその変化形,高岡のテヤはさらにそれが変化したものと推測される。こうした呉西地方のテヤ形の成立・変化は,上方語や他の西日本方言の「テ敬語」の成立についても再考の余地があることを示唆する。