著者
森 直久
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.81-91, 2005-01

被疑者に対する不当な取り調べの抑止のため、取り調べ状況の可視化の必要性が叫ばれている。しかし取り調べ状況の可視化、少なくとも対話体資料の作成と開示は、被疑者だけでなく、すべての供述者についてなされるべきであろう。本論文は、実際の刑事事件を題材に、供述心理学の立場からこの問題を考察した。わいせつ事件の被害者とされている女子学生の供述調書に加え、彼女が二人の教師との間で繰り広げた、捜査初期の会話テープが分析された。このテープには、後の捜査で明らかとなるわいせつ行為の大要が含まれていた。しかし、それらはしばしば、教師の度重なる同一質問や促しの結果語られていた。また後の捜査で登場する事項が否定的に語られたり、このテープ以外ではほとんど登場しない事項が語られていたりした。被害者の供述が、このようなコミュニケーションによって整形されていったとすれば、その信用性は低いと言わざるを得ない。他方これが例外的な事態であることが判明すれば、供述の信用性と取り調べの適切さが認められたであろう。取り調べ状況の可視化がなされていたら、どちらの事態が発生していたのかを判断することも、被害者の供述が信用できるか判断することも容易であったであろう。

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