- 著者
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井口 正寛
- 出版者
- 東京女子医科大学学会
- 雑誌
- 東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, pp.E86-90, 2014-01
ロマン派を代表する作曲家であるロベルト・シューマンはかつてピアニストになることを夢見ていた。ところが、右手の障害のため夢を絶たれ、作曲家を目指すことになった。彼の時代には、右手の障害の原因は不明であった。梅毒治療薬の副作用説、後骨間神経ニューロパチー説など、これまで様々な診断が議論されてきたが、現在では音楽家のジストニア説が最も支持されている。音楽家のジストニアは、演奏動作特異的な障害を生じる難治性の疾患である。音楽家の数%に発症し、発症した約半数の音楽家はプロの演奏家としての道を断念することになる。今日では治療法が進歩を見せる一方で、正しい診断を下されず、治療機会を逸する患者が多く存在すると推測される。本論文では、シューマンの右手に関する病歴を振り返り、右手の障害の原因及び、音楽家のジストニアについて検討する。