著者
三宮 愛
出版者
神戸女学院大学
雑誌
女性学評論 (ISSN:09136630)
巻号頁・発行日
no.28, pp.133-161, 2014-03

本研究の目的は、女性同(両)性愛者のコミュニティ参加が自尊心と精神的健康に及ぼす影響を検討することである。特に、同(両)性愛者のコミュニティに関して大規模で短期的な「イベント」と、小規模で中長期的な「友人グループ」に分け、それぞれのコミュニティに参加する心理的意味を精査した上で、短期的な心理状態の指標である「精神的健康」と長期的な心理状態の指標である「自尊心」に及ぼす影響を調べた。研究1では女性同(両)性愛者の当事者が抱える問題とコミュニティ参加の捉え方について面接法を用いて調査した。その結果、性的指向の自覚と葛藤は思春期に起こり、性的指向を確立させた後にカミングアウトするという過程を辿っていた。また、イベントには性的指向を確立した者が参加し、特に外向的な者が満足しやすい可能性が示唆された。研究2では、研究1の知見に基づき、(1)コミュニティ参加の心理的意味、(2)それらが精神的健康や自尊心に及ぼす影響、(3)外向性との関連性、について質問紙法を用いて調査した。結果は以下のとおりであった。はじめに、イベント参加には"価値観変化"、"娯楽"、"関係形成"、友人グループ参加には"価値観肯定的変化"、"日常満足"、"関係発展"の心理的意味があることが示された。また、女性同(両)性愛者はこれらの心理的意味を非常に重要視していた。加えて、イベントやバーでの"関係形成"が自尊心を向上させ、友人関係による"日常満足"が精神的健康と自尊心のどちらも高めていた。この結果は、日常場面で性的指向を明示することのない女性同(両)性愛者が、同(両)性愛者コミュニティにおいては自然体で関係を形成することが可能となり、「自分と同じ人はたくさんいること」を意識した結果、精神的健康・自尊心共に良い影響を与えているものと解釈できる。さらに、10代の対象者のみ、イベントやバーでの"価値観変化"が精神的健康を促進していた。この結果から、アイデンティティ未確立の女性同(両)性愛者が思春期に性的指向に葛藤した際、同じ性的指向を持つ者との関わりの機会が重要になることが示唆された。このことは、同世代の男性同(両)性愛者にも該当すると考えられるため、今後の同性愛者支援に向けて、多様な性のあり方に触れる機会を学校教育場面で設けることが必要であろう。

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