著者
苫米地 誠一
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.143-180, 1998

院政期末から鎌倉期前期の興福寺僧である笠置上人解脱房貞慶は、「鎌倉旧仏教改革派」の代表的人物の一人として位置付けられ、法然房源空の専修念仏に対する批判や戒律復興運動の先駆者として取り上げられることが多く、法相宗僧として「唯識同学鈔」など法相宗関係の著作を数多く著し、その思想、信仰についても法相宗の教理的背景の下に説明される。而し貞慶は同時に真言宗僧でもあり、その信仰も真言宗の信仰に基づいていると見られる。而しその真言宗の信仰に関する側面については殆ど無視されており、現在までの貞慶の思想・信仰に関する理解は極めて偏ったものになっていると思われる。そこで今回は、その欠けた部分の一端を補う意味において、貞慶の『観音講式』を取り上げ、そこに見られる密教浄土教の信仰について些か見てみたいと思うものである。

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