- 著者
-
今泉 亜子
- 出版者
- 日本精神保健看護学会
- 雑誌
- 日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.30-39, 2014
本研究の目的は,精神科病院に長期入院している患者たちとのゲームを通してのかかわりから,その場にどのような相互交流が生み出されるのかを明らかにするとともに,その意味を考察することである.研究者はオセロで遊ぶことをすすめる目的としていたわけではなく,ただ患者たちの求めに応じてオセロを行っていた.だが患者たちが次々と参加してきたため,オセロは途切れることなく,フィールドワーク最終回まで行われた.他者との繋がりを恐れながらも求めていた患者にとって,オセロは人に近づくきっかけとなり,オセロの場はたんなる遊びの場ではなく,相互交流の場となっていた.また「葛藤が生じれば逃げる」「相手を容赦なく叩きのめす」などというオセロのやり方と患者の"問題行動"には共通するパターンが見られ,患者のこれまでの生きてきた世界を映し出していた.患者は遊びの中で自分を表現し,人とのかかわりを体験することにより,繋がりを回復し成長することができる.それをサポートするためには,看護師には患者と遊べるようなゆとりが必要であり,病棟全体も,そうしたゆとりを作っていく工夫が求められる.