著者
金城 達也
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
vol.17, pp.141-155, 2011

<p>本稿は,地域社会の環境管理における主体の正統性が,自然とのかかわりによって形成された規範意識によって保証されていく過程を考察するものである。</p><p>事例地となる沖縄県国頭村楚洲集落では2008年から地域おこし事業が展開された。</p><p>事業では,サンゴ礁漁業によって形成された規範意識が現在における正統性を保証する要因のひとつとして利用されていることが明らかになってきた。</p><p>本稿では,自然とのかかわりにおいて形成された規範意識がなぜ現在の地域環境管理における主体の正統性を保証するものになり得たのかという問題関心に対し,自然-社会の関係性の曖昧さという観点から考察するものである。</p><p>その結果,楚洲集落のサンゴ礁漁業におけるメンバーシップや収穫物の分配方法の曖昧さが,規範意識や集落内外の社会関係を築くために重要な役割を担っていたことが明らかになった。また,その関係性の曖昧さゆえに,現在における地域おこしにおいても主体の正統性を保証するものとして有効性をもっていることが明らかになった。</p><p>正統性の議論では,他者排除性の軽減や試行錯誤を保証するしくみの重要性が課題とされる場合がある。本稿で扱う事例のような関係性から生み出される正統性には,他者排除性を軽減するしくみや,試行錯誤を保証するしくみが備わっている可能性がある。</p>

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