著者
西村 理
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.52, pp.6-30, 2014-03-01

アントニーン・ドヴォルザーク(1841〜1904)の交響曲第9番作品95「新世界より」の第2楽章の旋律は、《家路》というタイトルで親しまれている。《家路》というタイトルは、ドヴォルザークの弟子ウィリアム・アームズ・フィッシャー(1861〜1948)が作詞し、1922年に出版した《Goin' Home》の訳語である。本論文の目的は、《Goin' Home》がいつから《家路》として知られるようになったのか、《Goin' Home》と《家路》の歌詞はどのような関係にあるのか、さらにどのようにして《家路》が流布していったのかを明らかにすることである。日本で1931年3月に発売されたシルクレットのレコードがきっかけとなり、《Goin' Home》は《家路》として知られるようになり、ラジオでは1932年以降、英語で歌われていたものの《家路》というタイトルで放送されるようになった。1934年以降、《Goin' Home》に基づいた複数の日本語歌詞による楽譜が出版され、ラジオでも1937年から《家路》もしくはそれに類するタイトルの曲が放送されるようになった。フィッシャーの《Goin' Home》の歌詞における「home」は、文字通りの「故郷」と「天国の故郷」という二重の意味を持っていたが、《家路》として流布していく過程で、前者の意味のみが広まっていった。

言及状況

Wikipedia (2 pages, 2 posts, 1 contributors)

収集済み URL リスト