著者
中山 明子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.73-89, 2007

13世紀後半以降に北中部イタリアの諸都市で見られた豪族対ポポロの対立は、かつて階級闘争として捉えられたが今はむしろ当時の支配層内部の争いとして理解され、党派争いにおける「排除と統合」のメカニズムの面でも注目されている。A.ジョルジは豪族とポポロ関係のシエナモデルを分析し、有名なフィレンツェモデルなどとの比較を通じて相対化した。また都市内部のみならず周辺農村領域における両者の関係にも着目し、「ネオ・シニョリーア」の形成と拡大の過程を動態観察的に辿ることによって、領域支配体制を整えつつある都市とその支配下の農村の関係を明らかにした。本稿ではこのシエナモデル、及び「ネオ・シニョリーア」の具体的な内容を紹介し、筆者自身のテーマである折半小作制との接合点を提示する。
著者
永田 孝信
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.51, pp.38-52, 2013-03-01

古典派音楽と比較すると、ロマン派音楽の和声には機能的に把握できない一連の和音の動きが含まれることが多い。本稿では、その中からRoving Harmony(浮遊和声)とParallelChord(平行和音)を取り上げ、両者が機能和声に基づく長・短調システムからの離脱であり、調性に曖昧さや不確定性を与える「非機能的和声」としての性格をもつこと、さらに両者は機能和声との相関的関係において調性の確定度に関与し、ロマン派音楽における調性の4 つの局面、すなわち「安定」「不安定(流動的)」「曖昧」「不確定」の状態をもたらすために必要不可欠な要素であることを明らかにする。また、この調性の4 つの局面が「夢と愛」に集約されるロマン主義の理念とどのように関連するかについても概説する。
著者
西村 理
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.53, pp.7-22, 2015-03-01

東京放送局(JOAK)が、開局当初から日本交響楽協会、後に新交響楽団による演奏を放送していたように、大阪放送局(以下、JOBKと表記)も、開局の早い段階で大阪フィルハーモニック・オーケストラの演奏を放送し、1929年6月から約4年間の空白の時期があったものの、1933年4月には大阪ラヂオオーケストラおよび大阪放送交響楽団を発足させた。本論文では、JOBKの番組制作において放送オーケストラが、どのような役割を担っていたのかを明らかにすることを目的とする。1925年5月10日から1945年8月15日までJOBKの『番組確定表』、およびその番組に関する新聞記事の考察によって、大阪フィルハーモニック・オーケストラは地域に密着し、大阪文化の発展に寄与したのに対して、大阪ラヂオオーケストラおよび大阪放送交響楽団は、一地域に留まらず、全国に向けて発信していくJOBK独自の番組を制作していく上で重要な役割を担っていたと結論付けた。
著者
大竹 道哉
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.51, pp.53-70, 2013-03-01

フェルッチョ・ブゾーニ(Ferruccio Busoni, 1866-1924)は、イタリア、エンポリ出身の作曲家・ピアニスト・指揮者・音楽学者である。ピアニストとして幅広く演奏活動を行っただけでなく、作曲家として、オペラをはじめ、幅広いジャンルの作品を残している。また、バッハの作品を校訂し、オルガン作品を編曲したことでも知られている。音楽学者としての著作も残している。ヨハン・ゼバスティアン・バッハは、オルガンのためのコラールに基づかないフーガを含む作品を数多く残している。ブゾーニはこのうち5 曲をピアノに編曲した。このほかにもブゾーニは、バッハのオルガンのためのコラール前奏曲の編曲、自由な改作などを残している。今回は、バッハのオルガンのためのコラールに基づかないフーガを含む作品のピアノ編曲について、演奏者の視点から、特にピアノ編曲によってもたらされた演奏時における身体感覚の違いについて考察していきたい。
著者
阪井 葉子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.51, pp.5-23, 2013-03-01

アメリカ合衆国からフォークリバイバル運動が世界中にひろまった1960年代、ナチス・ドイツによって破壊された東方ユダヤ人集落(シュテートル)に伝わっていたイディッシュ語の歌をレパートリーに、西ドイツで演奏活動をはじめた歌手たちがいた。彼らがイディッシュ・ソングを取りあげた動機は過去の克服とユダヤ文化の破壊に対する贖罪だった。その意図の真摯さ故に、彼らの演奏活動はユダヤ人教区やイスラエルでも認められた。ただし、社会批判的な運動であるはずのフォークリバイバルにも、伝統歌謡のうたいあげる過去の世界へのノスタルジーと結びついた保守的な側面がある。イディッシュ・ソングのうたう「失われたシュテートル」への憧れにふけることで、とりわけ若い世代のドイツ人のあいだで、自国の罪に対する意識が薄れていく危険性がある。
著者
谷口 真生子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.53, pp.62-73, 2015-03-01

ガットマンモーネは、イタリアで品行の悪い子どもに対する脅かしのために引き合いに出される怪物のことである。ガットマンモーネの名称とその存在はディーノ・ブッツァーティの作品から知った。どうやらイタリア以外の国では見かけない怪物のようであり、さまざまな描写や解釈がなされているようである。本稿ではガットマンモーネという名称とその履歴をイタリアの怪物にからめて考察し、さらに数種類のガットマンモーネについてを記述し、ガットマンモーネとは何であるか、という到達目標に向かう途中経過を報告するものである。
著者
竹田 和子
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.43-48, 2016-03-01

中部ヨーロッパ地域に、「ドイツ」の名を初めて冠した「ドイツ帝国」が誕生したのは、1871年、今から150年足らず前のことにすぎない。それ以前のドイツは18世紀になっても、300以上の領邦に分かれていた。ほぼ独立国家といってもよいこれらの領邦が一つにまとまるには相当な困難があったことは想像に難くない。しかし「国民」の一体感を高め、ドイツ統一に寄与した市民階級は、一方で新たな分裂を見ることになった。政治における近代の歴史的発展を、ドイツの歴史家オットー・ダンの5段階モデルに従って、1848年の3月革命までのドイツ史を概観し、ドイツの国民形成の過程について考察する。
著者
西村 理
出版者
大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
no.52, pp.6-30, 2014-03-01

アントニーン・ドヴォルザーク(1841〜1904)の交響曲第9番作品95「新世界より」の第2楽章の旋律は、《家路》というタイトルで親しまれている。《家路》というタイトルは、ドヴォルザークの弟子ウィリアム・アームズ・フィッシャー(1861〜1948)が作詞し、1922年に出版した《Goin' Home》の訳語である。本論文の目的は、《Goin' Home》がいつから《家路》として知られるようになったのか、《Goin' Home》と《家路》の歌詞はどのような関係にあるのか、さらにどのようにして《家路》が流布していったのかを明らかにすることである。日本で1931年3月に発売されたシルクレットのレコードがきっかけとなり、《Goin' Home》は《家路》として知られるようになり、ラジオでは1932年以降、英語で歌われていたものの《家路》というタイトルで放送されるようになった。1934年以降、《Goin' Home》に基づいた複数の日本語歌詞による楽譜が出版され、ラジオでも1937年から《家路》もしくはそれに類するタイトルの曲が放送されるようになった。フィッシャーの《Goin' Home》の歌詞における「home」は、文字通りの「故郷」と「天国の故郷」という二重の意味を持っていたが、《家路》として流布していく過程で、前者の意味のみが広まっていった。