著者
尾之上 高哉 丸野 俊一
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.26-41, 2012

本研究の目的は,学び合う授業の中で,教師がどのような働きかけを実践していくことが.「児童が積極的に発言できるようになる」という変化を引き起こすことに繋がっていくのか,を明らかにすることであった。学び合う授業に熟練した教師が担任となった学級の児童のうち,「1学期当初は,発言することに強く抵抗し,ほとんど発言できなかったが,2学期後半頃から自発的に発言できるようになった」T児に注目し,T児の変化を生み出した教師の働きかけを,教師・T児・観察者の3つの視点から総合的に分析した。その結果,児童の積極的な発言行動を促すためには,次のような教師の働きかけが重要であることが示唆された。それは,児童に可能な範囲で発言を試みさせる過程で,(1)クラスの児童達が,発言児に対して共感的に関われるようになるための働きかけを行うことにより,児童達が「自分の発言に対して,周囲のみんなは共感的に関わってくれる」と認識できるようにすること,(2)発言することの意味を明示的にも潜在的にも伝える働きかけを行うことにより,児童達が「自分が発言することは,ここでの学びを深めていくために役に立つ」と認識できるようにすること,である。

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