- 著者
-
東山 寛
- 出版者
- 日本農業市場学会
- 雑誌
- 農業市場研究 (ISSN:1341934X)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.4, pp.3-8, 2013
日本のTPP交渉「参加」をめぐる動向は、APEC首脳会合に先立つ2011年11月11日におこなわれた野田首相会見で大きな節目を迎えた。このなかで「TPP交渉参加に向けた関係国との協議に入る」ことが述べられた。わかりにくい表現であるが、「参加協議入り」と称される。米国はこれを承けて12月7日に国内ステークホルダー向けのパブリック・コメントを実施したが(連邦官報公示)、そのタイトルは「Japan's expression of interest in the proposed TPP trade agreement」であり、「関心表明」と受け止められている。「参加協議入り」は正式な「参加表明」ではない。このことをまず最初に銘記しておきたい。これに伴い、TPP交渉参加国(当時9ヶ国)との「事前協議」が開始されることとなった。首相会見で述べられたことは、次の3点である。事前協議を通じて、(1)「各国が我が国に求めるものについて更なる情報収集に努め」ること、(2)「十分な国民的議論を経」ること、その上で、(3)「国益の視点に立って、TPPについての結論を得ていく」とした。以下では、この事前協議をめぐる問題に焦点を絞って検討する。後述するが、日本と同時に「関心表明」をおこなったカナダとメキシコは、2012年6月に正式参加が認められた。その参加プロセスを通じて明らかになった事実関係にも触発されて、本報告はTPPを「米国の対日要求」という視点から考えることとしたい。