著者
緒方 妙子
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.99-107, 2015-03

日本政府は、2013年4月1日より子宮頸がんワクチンを定期接種にして推奨していたが、副反応の出現が相次いで起こり、同年6月14日厚生労働省は積極的勧奨を一時中止とする決定を下した。しかし、予防接種法に基づく定期接種の対象からははずしていない。2014年1月20日の有識者検討会では、再び積極的な接種を再開する方向で議論が進んでいる。このような判然としない方針の中で、このワクチンにどう向き合うべきか悩む人も多いのではないかと考え、女性と共に健康を支援する助産師として、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から、どのような論拠に立って相談に応じたらよいか考えてみた。 リプロダクティブ・ヘルス/ライツには、性感染症からの自由、安全で満ち足りた性生活を営むことができる権利、そのための情報と手段を得ることができる権利、最高水準の性に関する健康を享受する権利が含まれている。そして何よりも大切なのは、自己決定権である。このワクチンには、予防効果が不確実・限定的で、解明されていないことも多く、自己決定に必要な情報が提供できないと言え、その定期接種の際に、未成年者に難しい自己決定をさせることは、本来の自己決定権の侵害につながる恐れがあるのではないかと思われる。また、安全・安心な性生活が送れるような社会にするためには、危険が身に及ぶかもしれないワクチンに頼ることではなく、やはり健全な男女交際への意志を養う教育が基本ではないかと考える。

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