著者
山本 欣司
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.52-60, 2005

小学校六年国語教材「海の命」は、教師用指導書や実践報告等を見る限り、父を殺された太一が、「父を破った瀬の主」を捕らえ父を乗り越えようとするものの、瀬の主を「海の命」と見ることで認識を転換し、共生を選ぶ物語として教授されているようである。しかし、太一から殺意が感じられず、瀬の主への恨みも読み取れないこと、太一の出会ったのが「父を破った瀬の主」かどうか確定できないことなどから、そもそもこの小説は復讐譚的枠組みとは無縁であると考えられる。作品に突然の転回をもたらしたのは、太一がそれまで抱いてきた瀬の主への憧憬であり、海への畏敬の念であった。「海の命」は、与吉じいさの後継者としての太一の生が描かれた作品である。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (3 users, 3 posts, 0 favorites)

CiNii 論文 -  立松和平「海の命」を読む 論文まで出てた https://t.co/NZ0LGB0Z3h
CiNii 論文 -  立松和平「海の命」を読む こくごの教科書に出てきたあの二文字のめちゃでかいフィッシュだと思ってたんだ…ごめんフロイド…命だけは助けてくださいヴィル様… https://t.co/qloCIP7CxW
娘の音読で初めて聞いた「海の命」、この論文が面白かった。CiNii 論文 -  立松和平「海の命」を読む https://t.co/Dp7GR1cDne #CiNii

収集済み URL リスト