- 著者
-
伊藤 佐枝
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.12, pp.22-30, 2000-12-10
絶えず自作を書き替え続ける作家として志賀直哉を捉えた時、『豊年虫』は『城の崎にて』の書き替えとして読むことができる。十二年間を隔てた両作品は一人旅する作家、秋の温泉地、小動物の死など具体的な風景を共有しながら微妙に視野をずらす。本稿は『范の犯罪』『邦子』という志賀の他作品との関連にも注目しながら、<個>の発見、<書くこと>と<生きること>の関係という二点からこの書き替えを考察した。