- 著者
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吉田 司雄
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.11, pp.54-68, 1999
菊池寛の『日本競馬読本』は、馬の血統、記録を研究する大切さを語ることで競馬を「ばくち打」の所業と峻別する一方、「情報信ずべし、然も亦信ずべからず」との名言をもって、勝ち負けを不可知的な領域に置いた。『日本競馬読本』刊行と同じ昭和一一年に結成された日本競馬会は、政府の言論統制を受ける形で一六年に機関誌「優駿」を創刊。多くの文学者の言説が競馬の文化的・不可知的側面を補完するようになった時期、中河與一「愛戀無限」や片岡鉄兵「朱と緑」においては、競馬の偶然性が物語の進行を円滑にすすめるための経済的原理として導入されていた。