著者
高橋 重美
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.27-37, 1998

明治二十年代、習作期の樋口一葉は師である半井桃水から「女装文体」(関礼子)の習得を求められた。それは明確にジェンダーを反映した「虚構のコード」であり、一葉はそのコードによって<読まれる>ことを意識した上で、自らの言語表現を組み立てていかねばならなかった。一方明治末期から大正にかけて、平塚らいてうは『青鞜』誌上で、自身を<読む>主体と位置付け、あらかじめコードを共有する読者のみに語りかける言語表現を展開してゆく。その営みは新たなコードによる共同体を形成したが、同時に異なるコード=他者を不可避的に排除するものでもあった。本論では、この一葉とらいてうを繋ぐ言説変化を仮説として設定し、それを補助線に「煤煙」の朋子の発話及び手紙の言説を分析する。そこには<読まれる>ことに発する戦略と、<読む>主体性との錯綜した関係が凝縮されている。

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CiNii 論文 -  <読まれる>者から<読む>者へ : 「煤煙」・朋子の手紙に見る新しい女の主体定立過程 https://t.co/ZFq3Gss5kd #CiNii

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