- 著者
-
笠原 広一
- 出版者
- 美術科教育学会
- 雑誌
- 美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, pp.223-242, 2014
ポストモダンの芸術体験におけるコミュニケーション研究から,理性と感性の統合におけるコミュニケーションの感性的位相に着目した実践研究を行った。幼児の絵画表現ワークショップを対象に,参与観察とビデオ記録によるビジュアル・エスノグラフィーを基にエピソード分析を行った。芸術体験の中で相互に情動が感受・共有される様子や相互の変容,関係性と場の変容が生まれる様子と過程を明らかにした。こうした芸術体験における相互の変容は言葉の意味伝達だけでなく,情動や身振り,場の雰囲気などが力動感(vitality affect)を伴いつつ,非自覚的・非直接的なコミュニケーションとして豊かに媒介されていた。芸術体験の実相とその意味生成には,感性的コミュニケーションが大きく影響していることが明らかになった。