- 著者
-
呉 哲男
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.1-10, 1995-01-10
今日の文学研究は、共同体を維持するために不可欠なヘテロセクシュアル(異性愛)のみを普遍的な愛とする近代の社会制度に同調し、性の領域に対して自由な感受性を働かせることを抑圧してきた。ここではフーコーの提起した「自己への配慮」(『性の歴史』)という概念を援用して、大伴家持と池主の「交友」の基底にホモセクシュアルな感情が流れていることを論じ、『万葉集』の宴席歌における挨拶性という問題を再検討した。