- 著者
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山下 真史
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.12, pp.11-19, 1994-12-10
中島敦の『名人伝』は、名人を純粋さの体現者とする通念に対して、名人を突き詰めれば木偶に至るということ、そしてその名人を偶像化することの滑稽さを描いた作品である。川端康成の『名人』などと比較しながら、同時代の文学状況にこの作品を置いてみると、中島が太平洋戦争下の日本の<純粋さ>を徒に崇める風潮への批判、陶酔を拒否して醒めた認識を持ち続けることをモチーフとしてこの作品を書いたことが分かる。