著者
姜 京範 不破 茂 江幡 恵吾 バスケス A. ミゲル 金 碩鍾
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.185-192, 2015

沿岸域で使用されているかごは,角柱型や円柱型の形状が多く,かごの表面は網地や金網で覆われ,魚類や甲殻類などを漁獲対象として使用されている。かごの設置海域は底質が砂や泥で平坦な形状で,水深が3~1,000mである。かごが設置される海底付近の流れは表層の流れと比べて遅いと考えられる。一方,河川で使用されているかごは,形状が円柱型で,かごの表面には丸竹や割竹などが取り付けられ,オイカワやフナ,コイを対象として使用されている。これは設置される流速環境を反映しているものと考えられる。鹿児島県内の河川の月別平均流速は0.1~0.5m/sであり,河川で使用されているかごは,沿岸域で使用されているかごと比べて流速が速い場所に設置されている。河川や沿岸域で使用されているかごは対象種により様々な形状があるが,その中でも角柱型と円柱型が代表的な形状で,かごの表面を覆う素材は丸竹と網地に大別できる。流れに対するかごの全投影面積に占める表面の空隙面積の比率(β:空隙率,詳細は後述)は,河川で使用されるかごでは36~62%で小さく,沿岸域で用いられるかごでは80~96%で大きい。これらのかごを流水中に設置した時,かごの後流域ではかごに沿った流れとかごの内部を通過した流れが生じる。そこで,かごの後流域の流速分布に与える要因としてかごの形状と空隙率が考えられる。これらの要因によって形成された流速分布はかごの漁獲過程に影響するため,かごの後流域の流速分布がどのように形成されるのかを知ることは重要である。かご周辺の流れの変化と漁獲との関係については,山口らが島原湾内の流動環境とコウイカの漁獲量から,流れが遅い小潮時の方が大潮時と比べて漁獲量が多くなり,かご周辺の流れがかごの漁獲に密接な関係があると示唆している。また,Budiman et al. はかごの空隙率が大きくなるとかごの後流域の流速分布に及ぼす影響が小さくなることを報告している。一方,Fuwa et al. は鹿児島県の河川で使用されているハート型の竹かごの後流域における流速分布を調べ,後流域におけるかごの両側前方部では大きく減速し,かごの入口前方部ではやや減速した領域が下流側に舌状に伸びることを明らかにした。本研究では,かごの形状と空隙率がかごの後流域の流速分布に与える影響を明らかにするために,流れに対する投影面積が等しい角柱型と円柱型の2種類の形状のかごを用いて,かごの表面を丸棒または網地で覆って空隙率を変化させて,回流水槽実験によってかごの後流域の流速分布を測定した。

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